
いつか見ようとタブレットにダウンロードしていた映画を、大雨の長崎に向かう機内で観ました。
『雨の日は会えない、晴れた日は君を思う』
監督:ジャン=マルク・ヴァレ 主演:ジェイク・ギレンホール
陳腐な表現を承知の上で書くと、妻を突然の事故で亡くしたデイビスの喪失と再生の物語。
デイビスが事故で失ったのは妻ですが、その前から妻への愛も、人間らしい心も失っていたのか…。妻のことはよく知らない、と言いながらも、その死をきっかけに徐々に壊れていくデイビス。愛していると言えて、涙を流せたら、どんなに楽だったとでしょう。
「時計の修理も心の修理も同じだ。まずは分解して、隅々まで点検しろ。そして、組み立てなおす」
義父の気遣いの言葉をきっかけに、あらゆるものを分解・破壊をし始めるデイビス。水漏れを直してくれと妻が言っていた冷蔵庫、オフィスのトイレのドア、パソコン、家、モノだけでなく自分の打ち込んでいた仕事や社内での地位、人間関係も。
それは、失っていた妻への関心や愛情、身近な人を大切に思う気持ちを懸命に掘り出していく作業のように見えました。
原題のDemolitionは、破壊・解体。仕事人生で破壊したものは、その中で得たものを破壊しないと取り戻せないのであれば、哀しい限りです。
墓に寄った後、乗り込もうとした車のサンバイザーから落ちた、くしゃくしゃのメモを見つけます。
If it's rainy,you wo'nt see me,if it's sunny,you'll think of me.
サンバイザーにかけて、「必要な時だけ、あなたは私を観るのよね(あなたは私に無関心ね)」、というダブル・ミーニング。
そして、ふと妻が言っていた冷蔵庫のメモを思い出します。水漏れする冷蔵庫に例えた妻の思い。
Stop being such a drip and fix me already.
妻にどんなに愛されていたか、求められていたかを思い出し、涙する姿に、仕事一辺倒の人間の哀しさ・やるせなさを感じます。
かつて、心を亡くすような働き方をした経験のある方には、刺さる映画だと思います。
組織開発コンサルタント 後閑徹