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効率性向上を指向するテレワークに向けて No.2

■前回記事 効率性向上を指向するテレワークに向けて No.1
【5つの課題】
① 持ち出せない情報に対する技術的解決の遅れ  ・・・No.1にて既述
② ルール策定・仕事の標準化の遅れ 
③ 相互信頼の欠如 
④ 時間評価からの脱却の遅れ
⑤ 自宅におけるテレワーク環境整備の遅れ


※前回からの続き…
4.「②ルール策定・仕事の標準化の遅れ」について
「メンバー同士や上司・部下間の協議や問い合わせに多くの時間を費やしていた」「共有のライングループに流れてくる通知に対して反応しなければならず面倒」という声が多く聞かれました。
テレワークは、仕事の管理(特にその過程=仕方の管理)を働き手に委ねる働き方です。
これまで利用者と管理者が曖昧なまま負っていた仕事の過程への責任を急に働き手に委ねるのですから、双方とも細々と協議・確認をしたいと思うのは当然です。
仕事の管理の負担感を軽減し、協議や問い合わせを減らすには、以下の2方法が考えられます。
  1.仕事の標準化を図り、進捗を見える化することで不安を解消する    
  2.仕事の裁量を大幅に働き手に認める    

その都度、協議するのは、効率を落とす原因の最たるものであることに留意しましょう。

上記2方法以外にも、テレワークを稼働させるためのルール策定が不可欠です。
1>管理の手間の削減
その際、見落としがちなのが「管理の手間」です。管理の手間は、仕事の成果に寄与する時間ではありません。グループウェア等のツールを利用し、「管理の手間」をかけない工夫が必要です。始業時に予定・終業時に進捗をwebをつないで報告させている場合、どういう目的で行うのか、確認してみてください。管理者が把握したいだけなら、グループウェア上に載せることで十分ではないでしょうか。

2>集中時間の導入

効率が下がっているとの実感の原因は、仕事の中断回数の多さ≒仕事時間の細切れ化です。効率性は、実行者の集中力とその持続性に大きく左右されるからです。働き方改革の中で、内閣府等が推奨している「集中タイム」「がんばるタイム」が、テレワークにおいても同様に重要となります。グループウェアのステータスで表示する等工夫をして、くれぐれも不要不急のLineの通知音を鳴らしたり、電話をしたりして、仕事の邪魔をしないように。情報共有のルール化は大変重要です。

管理者の管理の効率化も含めて、仕組み(=ツールとルール)を考えてください。
5.「③相互信頼の欠如」について
私がヒアリングした中で、緊急事態宣言解除後は、一切テレワークしない、という企業がありました(ご発言は、より直截的でしたが、直截的故に、ここでは引用しません)。
当該企業でテレワークを阻害しているのは、企業からの「信頼の欠如」です。
信頼関係は、信頼と信頼への応答の循環により見直されていくものです。勤め先から信頼されない働き手が、勤め先を信頼するでしょうか。日本生産性本部の調査結果において、約3割が「勤め先を信頼していない(あまり信頼していない:23.9%・信頼していない:8.5%)」と回答しています。
勤め先を信頼していない働き手は、果たして効率を追求した働き方をするでしょうか。
 
もし、テレワークを進めるのであれば、少なくとも組織の側からの信頼は不可欠です。そして、その信頼を支える仕組みを考える必要があります。
先述した仕事の標準化・進捗の見える化は、行動と果たされた責任の見える化であり、働き手・仕事の管理者(組織)相互の信頼を担保する手段であることを付言しておきます。

 

6.「④時間評価からの脱却の遅れ」について

昨今の働き方改革・女性活躍推進(それを含んだダイバーシティ)・ワークライフバランスの実現の3つの政策は、すべて「長時間労働の是正」を求めてきました。これは、時間無制約な働き方から、時間制約があることを前提とした働き方への転換の要請です。

「目の届くところ(職場)で、どこまで時間無制約に働けるか」という評価を脱しない限り、「目の届かない場所」で働くテレワークが進まないのは当然です。評価すべきは時間ではなく、結果です。管理すべきは、人ではなく、仕事です。
評価制度自体、そして、管理者・評価者の意識の切り替えが必要です。

7.「⑤自宅におけるテレワーク環境整備の遅れ」について

「家で子どもに邪魔される」「保育園や学校に行けない子どもの面倒を見なければならない」「家事分担を求められ、仕事ができない」といった声がありました。仕事の効率化という点から、働き手自身が解決に乗り出すべき課題です。

私たちは、①子ども ②学生 ③配偶者 ④余暇人 ⑤市民 ⑥職業人 ⑦家庭人等の多様な人生上の役割(ライフロール)を、年齢とともに比重を変えながら生きています。比重のかけ方は、人それぞれ、ご家庭それぞれでしょう。だからこそ、是非、この機会に7つの役割の比重についてパートナーと相談していただきたいのです。職業人としての役割(仕事の効率化!)と他の役割を、どのように調和を図るか、どういう仕組みを作るか、を家族とともに考えることが不可欠です。

これを考えることは、男性の育児休暇取得の義務化の議論が企図していたことです。ワークライフバランスの定着、女性活躍・ダイバーシティの推進、働き方改革につながることです。

8.最後に

これまで記述してきた5つの課題とその対応策は、ひとつひとつが独立したものではなく、相互に関連するものです。5つの課題への対応策を具体化する際には、トップダウンではなく、多くの人間を巻き込みながら進めていくことが重要です。テレワークで働く者それぞれが、テレワークを意義あるものにできるか否かのカギを握っているのですから。

緊急事態宣言は解除されたといっても、COVID-19を契機とした「新しい生活様式」は今後も続きます。私たちの社会・働く場に対する負荷は、想像以上に大きなものです。
環境変化への対応に、一人ひとりが知恵を絞りましょう。そうすれば、きっとこの災厄を乗り越えることが出来ると信じています。最後に、英国宰相チャーチルの有名な言葉をひとつ。

A pessimist sees the difficulty in every opportunity,
an optimist sees the opportunity in every difficulty.

悲観主義者はあらゆる機会の中に困難を見出す。
楽観主義者はあらゆる困難の中に機会を見出す。
                                                                                          Winston Churchill

厳しい時こそ、楽観的に!

以上

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組織開発コンサルタント 後閑 徹

 

合同会社21世紀組織開発コンサルタンツ