■前回記事
【5つの課題】
① 持ち出せない情報に対する技術的解決の遅れ ・・・No.1にて既述
② ルール策定・仕事の標準化の遅れ
③ 相互信頼の欠如
④ 時間評価からの脱却の遅れ
⑤ 自宅におけるテレワーク環境整備の遅れ
これまで利用者と管理者が曖昧なまま負っていた仕事の過程への責任を急に働き手に委ねるのですから、双方とも細々と協議・確認をしたいと思うのは当然です。
仕事の管理の負担感を軽減し、協議や問い合わせを減らすには、以下の2方法が考えられます。
1.仕事の標準化を図り、進捗を見える化することで不安を解消する
その都度、協議するのは、効率を落とす原因の最たるものであることに留意しましょう。
1>管理の手間の削減
その際、見落としがちなのが「管理の手間」です。管理の手間は、仕事の成果に寄与する時間ではありません。グループウェア等のツールを利用し、「管理の手間」をかけない工夫が必要です。始業時に予定・終業時に進捗をwebをつないで報告させている場合、どういう目的で行うのか、確認してみてください。管理者が把握したいだけなら、グループウェア上に載せることで十分ではないでしょうか。
2>集中時間の導入
管理者の管理の効率化も含めて、仕組み(=ツールとルール)を考えてください。

当該企業でテレワークを阻害しているのは、企業からの「信頼の欠如」です。
信頼関係は、信頼と信頼への応答の循環により見直されていくものです。勤め先から信頼されない働き手が、勤め先を信頼するでしょうか。 において、約3割が「勤め先を信頼していない(あまり信頼していない:23.9%・信頼していない:8.5%)」と回答しています。
勤め先を信頼していない働き手は、果たして効率を追求した働き方をするでしょうか。
先述した仕事の標準化・進捗の見える化は、行動と果たされた責任の見える化であり、働き手・仕事の管理者(組織)相互の信頼を担保する手段であることを付言しておきます。
昨今の働き方改革・女性活躍推進(それを含んだダイバーシティ)・ワークライフバランスの実現の3つの政策は、すべて「長時間労働の是正」を求めてきました。これは、時間無制約な働き方から、時間制約があることを前提とした働き方への転換の要請です。
「目の届くところ(職場)で、どこまで時間無制約に働けるか」という評価を脱しない限り、「目の届かない場所」で働くテレワークが進まないのは当然です。評価すべきは時間ではなく、結果です。管理すべきは、人ではなく、仕事です。
評価制度自体、そして、管理者・評価者の意識の切り替えが必要です。
「家で子どもに邪魔される」「保育園や学校に行けない子どもの面倒を見なければならない」「家事分担を求められ、仕事ができない」といった声がありました。仕事の効率化という点から、働き手自身が解決に乗り出すべき課題です。
私たちは、①子ども ②学生 ③配偶者 ④余暇人 ⑤市民 ⑥職業人
⑦家庭人等の多様な人生上の役割(ライフロール)を、年齢とともに比重を変えながら生きています。比重のかけ方は、人それぞれ、ご家庭それぞれでしょう。だからこそ、是非、この機会に7つの役割の比重についてパートナーと相談していただきたいのです。職業人としての役割(仕事の効率化!)と他の役割を、どのように調和を図るか、どういう仕組みを作るか、を家族とともに考えることが不可欠です。
これを考えることは、男性の育児休暇取得の義務化の議論が企図していたことです。ワークライフバランスの定着、女性活躍・ダイバーシティの推進、働き方改革につながることです。
これまで記述してきた5つの課題とその対応策は、ひとつひとつが独立したものではなく、相互に関連するものです。5つの課題への対応策を具体化する際には、トップダウンではなく、多くの人間を巻き込みながら進めていくことが重要です。テレワークで働く者それぞれが、テレワークを意義あるものにできるか否かのカギを握っているのですから。
緊急事態宣言は解除されたといっても、COVID-19を契機とした「新しい生活様式」は今後も続きます。私たちの社会・働く場に対する負荷は、想像以上に大きなものです。
環境変化への対応に、一人ひとりが知恵を絞りましょう。そうすれば、きっとこの災厄を乗り越えることが出来ると信じています。最後に、英国宰相チャーチルの有名な言葉をひとつ。
A pessimist sees the difficulty in every opportunity,
an optimist sees the opportunity in every difficulty.
悲観主義者はあらゆる機会の中に困難を見出す。
楽観主義者はあらゆる困難の中に機会を見出す。
Winston Churchill
厳しい時こそ、楽観的に!
以上
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