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効率性向上を指向するテレワークに向けて No.1

1.テレワークの必要性
東京アラートが発動され、感染拡大第二波の到来も予断を許さない状況にあります。
「新しい生活様式」への転換は、生活・習慣、通勤や職場のあり方を含むもので、テレワークの導入は、喫緊の課題です。

 「新しい生活様式」(厚生労働省)
 
 
現状では、テレワークが必ずしも仕事の効率性向上に寄与していないとの実感が、前回記事で引用した日本生産性本部の調査結果に表れています。何の準備もなく、在宅で仕事をせざるを得ない状況でしたから、これは仕方のないことです。
しかし、企業にとって、生産効率を上げ、収益の拡大をめざすのは、不可欠の前提条件。したがって、生産効率の上がるテレワークへと移行する必要があります。
 
2.5つの課題
では、現在のテレワークにどのような課題があるのでしょうか。
緊急事態宣言後、テレワークを始めた組織の方々にお聞きしたところ、それぞれの組織の内情に即し、多くの感想を頂きました。

まとめると、以下の5つに集約されるようです。

① 持ち出せない情報に対する技術的解決の遅れ 
② ルール策定・仕事の標準化の遅れ
③ 相互信頼の欠如
④ 時間評価からの脱却の遅れ
⑤ 自宅におけるテレワーク環境整備の遅れ


以下、ひとつずつ取り上げていきます。

3.「 ①持ち出せない情報に対する技術的解決の遅れ 」について
テレワークを考える際、課題設定の仕方に注意が必要です。

『うちの仕事は、テレワークが可能か』
  理由:仕事の分析がされておらず、導入の可否の段階でつまづく危険大    
『持ち出せない仕事をどうするか』
  理由:課題設定が矮小化されすぎており、難しい分野から検討を始めることになる

望ましいのは、導入可否の次の段階(テレワークする範囲)からの検討です。導入の可否については、後から、再度検討することもできます。
むしろ、次の段階、すなわち、
『どの仕事ならテレワークできるか』
『どのようにすれば、テレワークが可能か』
という課題設定をすることが必要と考えます。

現在、テレワーク導入を検討している多くの組織は、まずは週2~3日から、という状況でしょう。 とすれば、『週2~3日、テレワークでできる仕事は何か』という問いの立て方が合理的です。

テレワークの範囲を考える際、「情報セキュリティ」と「仕事の仕方」という2軸で、整理してみると良いのではないでしょうか。 
このように考えていくと、「セキュリティ上、持ち出せ、かつ、一人で可能な仕事(右上)」が、まずはテレワークの核となる仕事、「セキュリティ上、持ちせず、かつ、チーム・協働ですることが好ましい仕事(左下)」が出社してすべき仕事となります。

その上で、テレワークの範囲をどう広げるか、を検討することになります。

「セキュリティ上、持ち出せない、かつ、ひとりで可能な仕事(右下)」は、セキュリティ・システムとの相関により、どこまで許されるかは決まります。また、仕事を細分化したり、工夫をすることで、「ここまでなら持ち出せる」という範囲を拡大できる可能性があります。
先述した「うちの仕事は、テレワークが可能か」という問いからアプローチすると、最初からこの難しい部分を検討することになります。また、セキュリティ・システムの強度がテレワークの範囲を決めることになるのは本末転倒ではないでしょうか。
 
「セキュリティ上、持ち出せ、かつ、チーム・協働が望ましい仕事(左上)」をテレワークするには、メンバー同士の意見交換・相互に影響を与え合うための仕組みは何か、どうすればメンバー固有の知恵・知識(暗黙知)を共有できるか、を考えることになります。webをつないだワイガヤやオフサイトミーティング、出社頻度等、工夫できるでしょう。

まずは、テレワークでできる範囲から始め、仕事の見直しと必要な工夫を重ねながら、可能な領域を拡大する。セキュリティ対応が先行するアプローチは危険。

このようなアプローチをすることにより、テレワークの導入を、仕事の見直しの契機とすることができます。前掲、日本生産性本部の意識調査では、テレワークにより「業務の要不要の見直し」が、『起こりうる』21.2%、『どちらかといえば起こりうる』42.7%となっています。
「起こりうる」を「起こす」に変える取り組みをしながら、テレワークを進める必要があります。

・・・・

 次に、セキュリティ・システム導入についてです。
どの程度設備投資できるかは、組織の規模・財務的な余力によりますが、基本的には、費用対効果を考え、導入効果が許される費用を上回れば、システム導入を検討することになります。

その際、効果をどう把握するでしょう。
テレワークによる残業の削減、無駄な業務洗い出しによる業務削減量、交通費の削減、冷暖房・電気代等オフィス運営費用削減等、数字になりやすい効果は概算し、具体的な数字にします。
働き手側の効果も考えられます。通勤時間の削減、メンタルヘルスへの貢献、勤務条件の改善、業務の見える化・平準化が進み、くすぶっていた不満が解消されるかもしれません。他にもブランド力の向上・人材獲得上のメリット等、考えるとまだまだあるはずです。

そして、重要な点は、テレワークのメリット・効果を、職場単位で話し合い、その価値を見つけていく、ということです。
数値化しにくかったり、企業側には間接的なメリットに過ぎないものであっても、テレワークという制度のメリットとして、働き手自身が明確に認識すべきです。
テレワークは、マネジャーの目が届きにくいため、働き手自身が、テレワークを続けていく意欲を高めることが重要だからです。このことは、先に課題として挙げた5つの課題の「③相互信頼の欠如」に関連することでもあります。

※続く※

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組織開発コンサルタント 後閑 徹

 

合同会社21世紀組織開発コンサルタンツ