· 

それぞれの9年

この9年間、時間の流れは人それぞれであったでしょう。
未だ、もがき苦しんでいる方々にかける言葉もありません。

多忙であった前職の暇をみつけて、何度か福島県いわきに泥掻きに行きました。立ちすくみ、茫然と作業を見つめている方、自分や家族に起こった不幸を感情を置き忘れてきたように話す方etc.。何と答えたら良いのか、かける言葉さえ見つかりませんでした。
ボランティアは、粛々と働き、震災ごみの集積場は、時をおいて行った2回目、3回目とどんどん大きな山になっていきました。

今はもうそのごみの山もきれいな更地になっていると聞いています。水浸しになった家財道具を運び出しに行った小名浜の民家は取り壊され、事務所と駐車場になっていました。身に起こったご不幸を他人のことのように語っていたご婦人は、悲しみを乗り越えていらっしゃるだろうか…。そうであれば良いのですが。

あれから9年、被災自治体で研修を担当したり、郡山の企業に支援に出向いたりするようになりました。仕事で伺う度に、少しでもお役に立てれば、と思います。

 


私が民間企業のみならず、自治体組織の支援をしている大きな理由の一つに、東日本大震災があります。自治体組織は、民間企業組織と大きく異なり、民間企業と同じ手法では運営できません。
自治体組織が強力になることが、地域の維持、存続につながります。自治体組織の効率化の難しさ、支援することのやりがいを日々感じています。

一方、民間企業もCSR(企業の社会的責任)、CSV(Creating Shared Value:社会と企業の共通価値創造)を深化させてきた9年と思います(CSVの概念をマイケル・ポーター教授がハーバード・ビジネス・レビューに寄稿したのは震災前。私がちょうど経営を学んだ時期に重なります)。
人口減少・市場縮小・高齢社会の到来と問題が顕在化しつつある現在、公私の連携を深める必要があります。その過程に、ビジネスもあるはずです。民間企業も、自分たちの改革・変革、新たな市場・ビジネスの創造と社会的課題の解決が共通する分野が増えていく時代なのではないでしょうか。

そして、私たちの立ち向かうべき問題の中には、もっといえば、世界・時代・社会・組織、その中には、どうしたら良いかわからずに立ちすくむ人がいる。その「ひと」を決して蔑ろにしてはいけない。

この当然のことを肝に銘ずる3月11日です。

組織開発コンサルタント 後閑 徹
合同会社21世紀組織開発コンサルタンツ